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「レティシア」(映画エッセー集)


さらば三越劇場



SUBJ:さらば三越劇場

【記憶の中の映画館】 さらば三越劇場

 

16日、大阪北浜の三越大阪店の旧館が取り壊されることに決まりました。大正時代に建てられた旧館の建物は、補修では関西大震災前の強度に戻すことが困難であるとの判断によるものです。 

 

この建物の8階にある三越劇場は、「イヴォンヌの香り」を上映中の1月17日以来休館していましたが、取り壊される旧館と運命を共にすることになりました。  3月には、「アデルの恋の物語」が上映されるはずでした。

 

三越劇場は、関西の名画座。 関西の「岩波ホ−ル」的存在で、ヨ−ロッパの名作を中心に上映していました。 ミニシアタ−が関西にできる以前は、フランス映画を上映する数少ない映画館のひとつとして、特に貴重な存在でした。

 

「DIVA」をはじめとして、「クレ−ルの膝」、「カミ−ユ・クロ−デル」、「野性の夜に」、「銀行」などなど、さまざまなフランス映画をこの古風な雰囲気の映画館で観ました。 映画の前後には、三越店内のLondon Tea Roomで、スコ−ンとロイヤル・ミルク・ティを楽しんだものです。

 

1988年の秋に大阪でCINEMAだいすき!フランス映画フェスティバルル開催された時、三越劇場でルイ・マル監督の「さよなら子供たち」が、ルイ・マル監督自身による講演に先立って、上映されました。 この日、10月30日は、ルイ・マル監督の誕生日でしたので、映画上映後、主催者が、講演の時、監督が登場したら、みんなでお祝いしようと呼びかけ、Bon Anniversaire, Monsieur Louis Malle.と書かれたよみがな付きのメモを会場に配ってくれました。客席のみんなで声を合わせて読む練習もしました。 講演開始まで、少し時間があったので、私たちは、三越の売り場で、プレゼントに扇子と花を買いました。

 

ルイ・マル監督が舞台に上がりました。 

 

客席から、みな声を揃えて、Bon Anniversaire, Monsieur Louis Malle!!映画の客席が、鑑賞したばかりの映画を撮った映画監督の誕生日をお祝いするという一体感を感じることのできた幸福な瞬間でした。 

 

さらば 三越劇場。      

 

(1995.2.17  Katsuyuki Kamei)