第2章 政府支出の現状と課題

第1節.政府支出の現状

(1)予算制度
一般会計予算    

p12
表2−1 一般会計歳入歳出予算総表



令和5年度当初予算

歳入総額      114兆3,812億円
   税収       69兆4,400億円  
   公債金      35兆6,230億円  

歳出総額             114兆3,812億円  
   国債費             25兆2,503億円 
   一般歳出            72兆7,317億円
   地方交付税交付金等    16兆3,992億円

 

プライマリーバランス(基礎的財政収支) 歳入から公債金収入、歳出から国債費を取り除いた収支  
令和5年
歳入114兆3,812億円−公債金収入35兆6,230億円=78兆7,582億円

歳出114兆3,812億円−国債費25兆2,503億円=89兆1,309億円
               プライマリーバランス マイナス10兆3,727億円


参考資料
令和6年度当初予算政府案 
財務省ホームページhttps://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024/seifuan2024/03.pdf


(2)一般会計の予算編成
5月頃   各省庁がそれぞれ翌年度の予算の見積もりを作成
8月末   財務省に対して8月末までに概算要求を提出
       →財務省は、各省庁から提出された見積もりを検討して財務省原案をまとめる。
12月末   政府案が決定
1月下旬   政府案を国会に提出
         →衆議院、参議院の順番に審議、衆議院で可決された予算案は、参議院で30日以内に議決しない場合には自然成立
                      ↓
国会の審議が紛糾して会計年度の始まる4月に間に合わないときは、暫定予算で対応。
                      ↓
会計年度が始まっても年度の途中で経済状況によっては補正予算が組まれることもある。(最初から組まれた予算は、当初予算とも呼ぶ)
                      ↓
会計年度が終了すると、決算を確定する作業に入る。
→決算は会計検査院の検査を経て、国会に提出。

 
(3)財政投融資
国が政府関係機関を通じて資本市場に参加し、国民から資金(郵便貯金、社会国民年金、厚生年金保険の保険料等)を集め(資金運用部に)、国民に融資すること。
財政投融資の機能
政策金融 中小企業育成、住宅建設促進
還元融資 年金に関係した健康の増進や生活向上
          厚生福祉施設                グリーンピア三木など
                                    ↓
平成13年4月  資金運用部は廃止され、郵貯などは市場で自主運用し、特殊法人は財投機関債を発行して市場から資金を調達。


参考資料
財務省による財政投融資の説明 出所:https://www.mof.go.jp/filp/summary/what_is_filp/)



(4)歳出
p15
図2-1 令和5年度一般会計当初予算(主要経費の内訳)


社会保障関係費が約37兆円、国債費に約25兆円 地方交付税交付金等が約16兆円 公共事業 約6兆円 文教科学技術振興 約5兆円



目的別 国家機関費、地方財政費、防衛関係費、国土保全及び開発費など 
所管別 内閣府、総務省、財務省、厚生労働省など

(5)歳入

p16
図2-2 令和5年度一般会計歳入総額と内訳

所得税 21兆480億円 18.4%
消費税 23兆3,840億円 20.4%
法人税 14兆6,020億円 12.8%
公債金収入 35兆6,230億円 31.1%


(6)特別会計

p.17 図2-3 特別会計について (令和5年度予算)

特別会計の歳出総額 441.9兆円
        純計額  197.3兆円
地方交付税交付金等 19.9兆円
社会保障給付費    75.4兆円
国債費償還費等 82.0兆円

p19
図2-4 社会保障給付費の増大

2021年 対GDP比  医療 8.6% 年金 10.1% 福祉その他 6.4%

図2-5 少子高齢化の推移

老年人口指数 65歳人口/15から64歳の生産年齢人口
合計特殊出生率 15歳から49際までの女性の年齢別出生率の合計

高齢化と少子化が進行

p20 図2-6 社会保障の給付と負担の現状(2023年度予算ベース)

負担
保険料 77.5兆円(59.3%)               公費 53.2兆円(40.7%)
→被保険者拠出31.4% 事業主拠出 27.9%

事業主拠出分 経済学的には本人が支払うべき保険料を会社が負担するフリンジベネフィット(現物給付)



第2節.政府支出の効率化
(1)経費膨張の法則 
19世紀 ワグナーの法則 近代国家では経済の成長とともに政府支出が増大
第2次大戦後 ピーコック=ワイズマン イギリスの実証分析  転位効果仮説

p.22
図2-7 我が国の実質政府支出の推移                                  



(2)費用便益分析(cost-benefit analysis)
<公共投資基準>
民間投資で用いられている基準を公共投資に適用
   投資収益の現在価値>費用の現在価値 
純現在価値(Net Present Value)が正ならばプロジェクトを採用






B:便益 C:経常費用 K:初期投資 r:割引率 
<数値例>
ダム 初期投資     4億円
各期に発生する純便益 Bt−Ct=2億円 
割引率           r=0.1
設備の耐久期間     3年



NPV=2/(1+0.1)+2/(1+0.1)2+2/(1+0.1)3-4=0.97
     NPV>0




<公共投資の優先順位>
純便益の現在価値を初期投資額で割って投資額1単位当り純便益を比較
便益をどのように測定するかが困難

便益・費用比

<費用効果分析>
目的実現のための複数の代替案の中から、費用最小のものを選択する

(3)予算のコントロール
  ゼロ・ベース予算
 シーリング
 ゼロ・シーリング
   マイナス・シーリング 昭和58年以降



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