第11章 地方分権のトピックス−三位一体改革と道州制

11.1 三位一体改革
<三位一体改革の経緯>

平成14年6月「基本方針2002」 国庫補助負担金、交付税、税源移譲の3つの改革を一体的に検討

平成15年度予算 「三位一体改革」の「芽出し」 5,625億円の国庫補助負担金の削減が先行実施
           義務教育費国庫負担金の一部(2,344億円)の一般財源化(1/2を特例交付金、1/2を交付税で措置)

平成15年6月「基本方針2003」  平成18年度までに、国庫補助負担金を約4兆円削減
平成16年度予算                  1兆円規模の国庫補助負担金の削減
                            所得譲与税(4249億円)と税源移譲予定特例交付金(2,309億円)という暫定的な手法での税源移譲が実現

平成16年6月「基本方針2004」  平成17年度と平成18年度に実施する約3兆円規模の国庫補助負担金の削減
                      税源移譲の規模は約3兆円
                      国庫補助負担金の具体案については地方公共団体にとりまとめを要請

平成16年8月   地方6団体の改革案が政府に提出
      @国から地方への税源移譲は、第2期(平成21年度)までに8兆円程度とし、第1期分(平成18年度まで)は約3兆円とすること
      A国庫補助負担金の削減は、第2期までに約9兆円とし、第1期分は3.2兆円とすること、
      B地方交付税の見直しをおこなうこと
 
平成17年11月  政府・与党の合意
            平成18年度において税源移譲にむすびつく国庫補助負担金の改革として6540億円程度を行うこと
            税源移譲は所得税から個人住民税への恒久措置としておこない、3兆円規模とすること
            義務教育費国庫負担金  国庫負担の割合を2分の1から3分の1への引き下げ
            児童扶養手当        国庫負担割合を4分の3から3分の1へ引き下げ
            児童手当           国庫負担割合を3分の2から3分の1へ引き下げ

P210
表11-1 三位一体改革に伴う国庫補助負担金改革の全体像

<三位一体の改革の全体像>
国庫補助負担金の削減額 3兆1,176億円となり、スリム化(4,235億円)、交付金化(1,330億円)を加えると、約4兆6,661億円
平成15年度に先行的に削減された部分を含めると約4.9兆円

税源移譲  総額3兆94億円  
        平成18年度     所得譲与税で実施
        平成19年度から    地方税である個人住民税の税率表は、10%(道府県4%、市町村6%)の比例税率

<三位一体改革の評価と今後の課題>

P211 図11−1
         三位一体改革による税収配分の変化
           比例税率化→ 地域間の税収格差是正につながった

    図11−2  税源移譲と補助金削減の差額
                大都市圏   税源移譲>補助金削減
                →ただし地方での損失はそれほど目立たない。    
 

<残された課題>
    
  地方に手厚い奨励的補助金は温存し、義務的補助金を削減
           ↓
       改革の実現性は高めたが、財政効率化にはつながらず

11.2 道州制
<道州制とは>

道州制とは、都道府県制度を、全国を9〜11のブロックに再編しようとするもの

図11-3   9区分の区域例

2006年 『道州制のあり方の答申について』
      ・市町村合併の進展等による影響
      ・都道府県の区域を越える広域行政課題の増大
      ・地方分権改革の確かな担い手


<道州制のメリット>
・情報の優位性 国が全国同一の画一的なサービスを提供するよりも、地方公共団体が地域の特性を考慮したうえで施策を実施する方が効率的
・規模の経済   広域化が効率性につながるという考え方
            P219  図11-4

・範囲の経済   複数の財・サービスを個別企業が別々に生産するよりも、ひとつの企業が複数の財・サービスを生産するほうが生産コストを節約できるという考え方
            →地方政府が地方支部局を吸収合併し、中央官庁の管轄にもとづく「縦割り行政」の弊害を廃することができれば、行政コストの削減につながる可能性がある

・地方公共財の外部経済・不経済  県域を超える便益の広がり(スピルオーバー)を持つ地方公共財の供給(例えば、県を跨る水系の整備など)や、一つの県では対処できない
                       環境問題などは広域的に対応する方が効率的であるという考え方

<道州制の課題>
 1.国と地方の役割分担の見直しを実施し、広域的な行政需要に関する政策立案能力を持つ霞ヶ関官僚の地方への移籍をはじめ、行政組織の再構築が必要
 2.県の仕事の受け皿となる市町村の行政機能、財政基盤の強化が必要
 3.国税と地方税に関する抜本的な改革も必要
    表11−2 近畿州、中国四国州、九州州の財源不足額は、1兆5000億円を超える状況
 4.新たな地域間財政調整制度の創設が必要
 5.長期的にみて、道州制が国民にメリットをもたらすかどうかを明示的に数値で示すべき



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