第10章 民間活力と公営企業

10.1 地方公営企業
<自然独占と公営企業>

水道、市営地下鉄→費用逓減型産業:固定費用が大きく、産出量の増加につれて平均費用が逓減
       自然独占

総費用   TC=1000+2Q
平均費用  AC=1000/Q+2

Q=1のときAC=1002
Q=2のときAC=502
Q=10のときAC=102
Q=1000のときAC=3


需要曲線=平均収入曲線 AR=P=100−Q
総収入  TR=100Q−Q2
限界収入 MR=100−2Q

利潤最大化  
MR=MCより  100−2Q=2
              Q=49

利潤={100*49−(49*49)}−1000+2*49
  =2499−1098=1401 

    限界収入=限界費用→独占利潤の発生


<地方公営企業の現状>


P193 表10−1

2004年度 事業総数 1万979
       地方公営企業法の非適用のもの 7721(2分の1以上(4139)は下水道事業)
       決算規模  法適用企業 15兆3,000億円、法非適用企業が5兆8,000億円


 図10−2 地方公営企業の経営状況

   病院事業の66.2%が赤字

<地方公営企業の経営原則>

 地方財政法   
  “その性質上当該公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費”及び“当該公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費”を除いて、当該企業の経営に伴う収入で賄うことが定められている。

 地方公営企業法
   「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」
   経費は料金で賄うと規定

                                     ↓
                 事業による料金収入で経営する“独立採算”が原則

公営企業の赤字の理由
  自然独占に対する「限界費用価格形成原理」



社会的厚生の最大化

 総余剰=総評価−総費用
 総余剰最大化   限界評価=限界費用

消費者の需要曲線:消費者の限界的評価
         需要曲線はある財を購入する際に支払ってもよいと考える価格
   消費者の需要曲線と限界費用曲線の交点で総余剰が最大化される。
  「限界費用価格形成原理」 
    

 限界費用価格形成原理にしたがった場合、利潤がマイナスになってしまう。
 →政府が損失を補填すればよい(ただし、経営努力を阻害、補助金の財源調達の問題もある)

<独立採算と公共の利益>

 赤字の要因
  
・価格が原価を償うに十分な水準に設定されていないケース
    
  ・
事業運営自体が非効率で運営コストが過大になっているケース

10.2 民間活力と公共部門
<第3セクター方式の拡大>
 「第3セクター」 公共部門と民間部門の共同出資
 地方公社 いわゆる“外郭団体”

80年代後半に急増
 
 1986年 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する法律」(いわゆる民活法)
  87年 「民間都市開発の推進に関する特別措置法」、「総合保養施設整備法」(いわゆるリゾート法)

<バブルの崩壊と外郭団体の事業破綻>
 1999年度 地方団体が50%以上出資している外郭団体4,580のうち、269で債務超過、3分の1が赤字経営

 リゾート施設建設は地方公共財?
    
<民間委託のメリットとデメリット>
 メリット  行政コストの削減 
 デメリット 供給に関する安定性の確保や安全性の関する不安等
 
<行政の外部化−独立行政法人−>
 独立行政法人(エージェンシー)化  公務員組織そのものを外部組織へと移行
 
 1980年代後半 サッチャー政権下のイギリスで導入
           行政効率を高めるために政策立案部門を除く事業実施部門をそれぞれ独立させて、人事や事業運営について大幅な裁量権を与えた。
                        ↓
           特許、車両検査、運転免許、高速道路など100を超える部門がエージェンシー化の対象
           97年3月現在 国家公務員全体の70%以上がエージェンシーに所属

 

<PFIとは何か>

 PFI(Private Finance Initiative)

1992年にサッチャー政権の構造改革路線を引き継いだメージャー首相のもとで導入
 
<PFIの種類>

表10−2 PFIの事業類型
  事業類型      内       容
BOT
(Build Operate Transfer) 
事業会社が施設を建設し、一定期間所有・運営した後、公共側に譲渡するもの。
BOO
(Build Operate Own) 
事業会社が施設を建設した後、公共側に譲渡することなく所有・運営するもの 
BTO
(Build Transfer Operate) 
施設完成後、公共側に譲渡し、事業会社は施設の使用権を得てその運営を行うもの。
BOS
(Build Operate Sell) 
 
施設の完成直後、ないしは一定期間後、公共側に施設を売却し、リースを受けて運営を行なうもの。 
BMT
(Build Maitenance Transfer)
施設の完成後、公共側に施設をリースし、メンテナンスを行なうもの。

出所)井熊均(1998)『PFI公共投資の新手法』日刊工業新聞社p71引用。



 
<日本のPFI>
表10−3 旧建設省によるPFIの分類
類型      内容
第1類型:料金徴収型



 
料金収入又は関連事業収入を充当することにより民間事業者が整備費用を回収するもの。徴収する料金や関連事業収入を公共施設整備費用にあてることにより原則として成立する事業。
第2類型:一体整備型


 
公共施設と民間施設と民間施設を一体的に整備することにより、公共施設整備を単独で実施するよりも効率が向上する(公共負担が軽減される)もの。
第3類型:公共サービス購入型





 
公共主体に代わって民間事業者が施設を整備・管理することが相当合理的であり、当該公共主体から対価を受け取るもの。民間事業者が建設・管理する施設から提供されるサービスに対し、公共主体が対価を支払うことにより、効率が向上する事業。
出所:(旧)建設省「日本版PFIのガイドライン」1998年5月より作成。





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