研究計画書 
『世帯所得における所得課税のありかた』
18M3062 嶋村 彩

論文構成
はじめに
第1章 所得課税の概要
1-1 所得課税の概要
1-2 配偶者控除の現行と改正制度
第2章 判例研究
第3章 分析と経済・家計への影響
3-1 先行研究
3-2 分析の枠組み
3-3 分析
3-4 結果
終わりに

論文の目的
現在結婚や出産を経験する人が減り、女性の社会進出や少子高齢化に拍車をかける状態であることから、労働人口の減少を補うため女性の社会進出が近年注目されている。
 女性の社会進出は、2014年よりアベノミクス3本の矢である「成長戦略」において重視されており、近年配偶者の就業規制を促進していると考えられる配偶者控除について、様々な改正案が出され税制改革を行われた。しかし、この改正は高所得者への優遇の解消及び一部の配偶者の労働意欲向上にとどまるものであった。そのため、この論文では配偶者控除の歴史や複数の改正案のシミュレーション等を踏まえ、家計での所得課税のあり方・経済効果について調べて制度及び課税のあり方について考える。

先行研究
 大石(2003)は、有配偶女性の就業・不就業決定、労働時間、稼働所得について妻本人や夫の属性をコントロールした分析を行い、税制や社会保障制度のもたらす便益の帰着について分配的な観点から考察を行っている。大石(2003)では、配偶者控除により賃金の増加により労働時間を調整する配偶者(20−59歳)は、4.5-10%程度おり、夫が高所得である配偶者の方が影響していることがわかった。また、妻が130−299万円稼ぐ世帯は、30代では10%、40−54歳で15%存在し、夫の収入が低いことにより税・社会保険料負担の覚悟の上で所得を稼ぐ必要性に迫られていることが要因であるとあり配偶者控除は高所得者を優遇する制度であるとしている。
 船橋(2014)は、我が国の課税単位を個人課税から世帯課税に変更した時のシミュレーション分析を行っている。船橋(2014)では、共稼ぎ・方稼ぎ共に年間収入階級が800万以下の世帯に増税・それ以上の世帯では減税となるという結果であった。課税単位について個人課税は世帯間の公平性が保てないとし、所得税法を幾つか改正を行うことにより世帯課税を適用すると世帯間の公平性が保たれるとしている。しかし、課税単位については、時代によりどちらが適しているかは常に議論しつづける必要があると示唆している。
 鈴木(2018)では、本間・斎藤・跡田・橋本(1998)、林・橋本・斎藤・本間(1989)を踏襲し、世帯類別の所得税を算出し片働きと共働き世帯の世帯主負担等についての分析を通し配偶者控除の有無について考察している。鈴木(2018)では、配偶者控除によって有利な世帯は少数派であり、配偶者控除を廃止して女性の社会進出を促進する必要があるか疑問であるとし、現行の所得税制は、片働き世帯にとって有利な制度であるとしている。

分析手法
1 単身世帯・夫婦世帯や共働き・片働きの相違による家庭への税負担の影響を明らかにし、女性の社会進出に伴う課税と労働の現状および配偶者控除との関係性を明示する。これを踏まえて配偶者控除のメリット・デメリットおよび現行の所得課税・配偶者控除のあり方について考察する。
2 H29年の改正案3つの案(細かく言えば5案)を実際に行った際どのような影響をもたらし、今回の改正が最適な制度であるか検証する。

参考文献
・ 大石亜希子(2003)「有配偶女性の労働供給と税制・社会保障制度」『季刊・社会保障研究』Vol.39,No3,pp286-305
・ 佐藤英明(2003)「配偶者控除及び配偶者特別控除の検討」『日税研論集』No.52,pp133-159
・ 佐藤主光(2011)「所得税・給付付き税額控除の経済学『フィナンシャルレビュー』通巻第102号
・ 鈴木善充(2018)「所得税の配偶者控除について」 近刊
・ 全国婦人税理士連盟(1994)『配偶者控除なんていらない』日本評論社
・ 武田公子(2011)「個人所得課税をめぐる諸論点」『立命館経済学』第59卷第6号
・ 田中雄一郎(2016)「配偶者控除の見直し」『租税研究』2016・12,pp2-4
・ 谷川喜美江(2009)「所得税における控除制度の問題点」『嘉税大学研究論集』51卷3号,pp95-114
・ 橋本恭之(1994)「個人所得課税の改革と具体的シミュレーション」『租税通信』第49巻第15号,pp112-120
・ 林宏昭(2018)「所得課税の再考」『関西大学経済論集』第67巻第4号,pp117—127
・ 林宏昭(1996)「所得税の控除制度と課税単位のあり方について」『総合税制研究』第4号,pp156-178
・ 林正義(2017)「103万の壁と就業調整」『租税研究』2017・7
・ 船橋充(2014)「所得税制の課税単位に関する一考察」『租税資料館賞受賞論文集』下巻,pp317-276
・ 本間正明・齋藤槇・跡田正澄・橋本恭之(1988)『88税制改革のシミュレーション分析』政策構想フォーラム
・ 中津秀一(2003)「ライフスタイルの選択に中立な税制」『経済研究』第8巻2号,pp67-78
・ 矢吹初・吉岡裕次・岩田篤・渡邊綾乃・深瀬敬二(2017)「配偶者控除の経済効果」『青山経済論集』第69巻第2号