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このコーナーを読んで、経済学者になれなくても当方は一切関知しませんので・・・

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大学院の受験準備


 経済学者になるためには、まずは大学院でトレーニングを積む必要があります。学部卒で官庁や民間の研究所に就職して、エコノミストになるケースもありますけど、その場合でもたいてい国内や海外の大学院での研修に出向することになります。出向の場合には、給料もくれるし、学費も出してくれるので、むしろ大学院に進むよりも賢い選択かもしれませんね。でも官庁や民間の研究所の採用は、大学院の受験以上に厳しいことをお忘れなく。民間の研究所の場合、最近では学部卒だけでなく修士課程修了者にも門戸を開いてますけど、昨今の不況の中で募集人員はかなり限られてきてますので。
 大学院入試は、以前に比べるとかなりやさしくなっています。ほんの10年前は、経済学研究科は理系の大学院とちがって、定員をかなり下回る人数しか合格者を出しませんでした。文部省の方針でどの大学も大学院生の数を増やしていますので、合格人数がかなり多くなっています。大学院入試の難易度は、学部入試の難易度とは比例しません。国公立大学の方が文部省の方針にしたがって大学院院生の数を増やしているので、私学の大学院に不合格となった学生が国立に合格する例が続出しています。大学院の合否システムは、国公立大学ではペーパーテストと複数の面接官による口頭試問で機械的に判定する傾向、私学ではペーパーテストと複数の面接官で順位を付けた後で最終的には指導教官の判断にまかせる傾向にあります。試験問題も国公立大学の場合には、マクロ、ミクロ、計量など複数の問題の中から各自が数問選択する傾向、私学の場合には、経済原論と各自の希望する専門科目という傾向があります。各自の希望する専門科目は担当の教員が出題しますので、難易度にかなり格差が生じます。英語に関しては、ほとんどの大学院が受験科目としています。英語の出題は、スタッフの誰かが出題します。経済史の人が出題するなら経済史に関する英語でしょうし、マクロの人ならマクロ経済学に関する問題を出題するでしょうね。科目によってかなりテクニカルタームが異なるので、幅広い分野の英語に慣れ親しんでおくべきでしょう。なお、英語の辞書持ち込み可のケースもありますが、辞書を引いている時間はまずありません。基本的な用語はすべて暗記しておきましょう。
 大学院受験のための準備としては、まずは学部の講義をしっかりと理解することです。学部時代にはあまり偏らず、幅広く勉強しておくことをお勧めします。特に、マクロ経済学、ミクロ経済学、計量経済学、経済数学、統計学は、将来いずれの分野の経済学者をめざす場合でも必須科目です。たとえ経済史にしか興味がないという人でも、これらの科目の学習は必ず役に立ちます。これらの科目は経済学における基本的なツールを提供してくれます。論文を書くときに直接役立たなくても、論理的な思考のためのトレーニングにもなります。経済史でも最近では計量経済史といった研究スタイルもでてきているそうなので、直接役立つこともありますしね。その他の科目としては、政策、歴史・学史系の科目をバランスよく学習して自分の関心にあった科目を探しましょう。経済学の科目だけでなく、会計科目や法律科目なども将来役立つことになるでしょう。たとえば、財政学では、政府のバランスシートの話などが流行ってます。経済学者をめざすなら、卒論にも力を注いでください。卒業論文は、最初の専門論文ですから。学部の卒論を執筆するうえでは、問題意識を明確にしたうえで、一定の目的のために、経済学部で学んだ知識を生かした論文を作成することを心がけてください。大学院入試の面接では、卒業論文について質問されることも多いですから。また、面接では研究計画書も重視されます。研究計画書については当館の大学院の部屋に、研究計画書についてがありますから参考にしてください。
 普段から学部の講義をしっかり理解していれば、どこの大学院入試も英語を除けば大丈夫でしょう。大学院入試の合否を大きく左右するのが英語の点数です。学部の英書購読だけでは不足です。これについては、入試の1年前ぐらいから準備しないと間に合いません。私の場合には、3回生の終わりぐらいからサムエルソンの経済学を1日4ページのペースで読みました。ほぼ一冊全部訳した記憶があります。原書と日本語訳を比較して、わからなかった専門用語を抜き出して、単語カードを作成してすべて暗記しました。いまならスティグリッツの経済学もお勧めです。ただし、日本語訳は3分冊になっているので大変な分量になりますね。専門科目については、ほとんどの大学が過去問を公開しているのでいろいろな大学の過去問を入手して模範解答を作成してみましょう。だいたいどこも似たような問題を出してますから。なお、科目によっては、論述問題だけでなく、計算問題も出している場合もありますので。


大学教員の採用システム


 経済学者になるには、大学教員にならなくても、官庁や研究所の研究員になる方法もあります。でも一番オーソドックスな方法は、やはり大学教員となることでしょう。大学教員の採用システムは、公募人事と推薦人事に大別されます。どちらを採用するかは、大学によって違います。国立大学だから公募、私立大学だから推薦というわけでもありません。また人事ごとに公募と推薦のどちらかを決めている大学もあります。

1.公募人事
 公募の場合は、全国の主要な大学に公募の通知を送付することになっています。うち大学の研究棟にも全国の各大学からきている公募の条件などの書類がおいてあります。よその会社の募集案内が社内で閲覧可能になっているなんて普通の会社だと考えられないでしょうけど、大学の場合には一般的です。これらの書類は主として大学院生のために置いてありますけど、結構スタッフも見てます。一般企業でも条件がよければ会社をかわる時代ですが、大学教員の場合、いくつかの大学を渡り歩く人がたくさんいますから。
 この公募の書類には、募集する科目、職階が明記されてます。たとえば、財政学、教授みたいに。年齢制限がついている場合もあります。40歳以下とか。提出書類については、健康診断書、業績書、履歴書、研究業績というのが一般的です。公募情報については、最近では、インターネットを通じてもおこなわれています。詳しくはこちらをご覧ください。
 公募の場合には、提出された書類にしたがって、書類審査、面接をおこないます。大学によっては書類審査で人数を絞ったあとでプレゼンテーションをさせるところもあります。プレゼンテーションは、セミナー形式で大学のスタッフの前でおこないます。
 公募の採用の場合、採用の可否は、ほとんどが研究業績の書類審査で決まります。数人の審査委員が応募者の論文を手分けして読み、順位をつけて、候補者を絞り込み、最終的には教授会で投票をおこなって採用を決めます。どこの教授会でも採用人事には3分の2の賛成が必要となります。
 したがって、経済学者になるためには優れた論文を数多く執筆する必要があります。論文数については、研究期間の長さにも比例するのでかならずしも数が多ければよいというものでもありません。1年あたりの生産性も重視されます。また、論文の評価は、審査委員によってかなり偏りが生じることもあるので、査読付の有名ジャーナルに掲載されている論文があれば高く評価されます。ただし、査読付のジャーナルは投稿してから掲載されるまで、海外のジャーナルだと2年か3年、国内の雑誌でも最低1年はかかるので、大学院生の場合には博士課程に進んだらすぐに投稿しないと間に合いませんので。私の時代は、大学院生の数もいまほど多くなかったので、ひとつの公募に対して応募者は4,5人程度でした。最近は、大学院生の数が急増していますので、ひとつの公募に対して2,30人の応募というのが一般的です。あと学会報告も重要なポイントです。大学院生はまず顔を売らないと駄目です。公募を出している大学の審査委員は優秀な院生が学会報告をしていないかを見に来ていますから。

2.推薦人事
 公募の場合は、各大学とも似たり寄ったりですけど、推薦人事のやり方は大学によってかなり違います。学内のスタッフが推薦する場合、学外の有名教授に推薦を依頼する場合などがあります。推薦だからかならず採用されるという保証はありません。推薦人事の場合も公募と同様に業績審査、面接などを経て、最終的には教授会で投票で決めます。つまり、コネがあっても、業績がなければまず採用されることはありません。有名教授による推薦については、古き良き時代の話ですね。大学院生の数が急増しているから、有名教授のところには山のように院生がいるわけですから、そのなかで推薦されるにはやはりそれなりに業績がないと駄目ですね。でも、有名教授に弟子入りするのは、経済学者になる近道ではあると思います。経済学者になるには、環境も大事です。まわりが優秀だとやはり刺激を受けますし、人が集まるところにはそれなりに理由がありますから。


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Last Updated 2001/04/22 20:53:05