研究計画書
給与所得控除の改正について 26M3065 宮尾 安紗美
1 はじめに
2 給与所得控除の現状と課題
2-1 給与所得控除制度の現状
2-2 給与所得控除改正と推移
2-2 給与所得控除の問題点
3 給与所得控除による判例研究
4 給与所得控除による影響
4-1 先行研究
4-2 分析手法
4-3 給与所得控除改正についての分析
5 おわりに
【問題意識と研究動機】
働き方改革の進展に伴い、労働参加の促進や就業調整の解消を目的として、課税最低限の見直しが行われてきた。とりわけ近年は、多様な働き方への対応が求められる中で、税制にも中立性が求められるようになっている。まず、2020年の税制改正では、給与所得控除の一律引下げと基礎控除の引上げが同時に行われた。この改正は、特定の働き方に有利・不利が生じないようにすることを目的としたものであり、結果として給与所得控除の一部が基礎控除に移された構造になっている。また、給与所得控除については、高所得者になっても給与所得控除額が増え続けるという問題が指摘されてきた。そのため、2013年の税制改正以降、控除額に上限が設けられ、その後も段階的に引き下げが行われている。この点からは、給与所得控除の問題だけでなく、高所得者への負担のあり方と関係して見直されてきたといえる。 さらに、国民民主党が主張した課税最低限の大幅な引き上げを考慮して、給与所得控除の最低保証額を引き上げることが2025年度に決定した。そして、課税最低限の引き上げに給与所得控除の引き上げを対応した理由は、全ての所得階層に対して税負担の軽減税率をもたらし、大幅な所得税の減税をもたらすからである。しかし、本来、課税最低限の引上げは基礎控除によって対応するのが原則ではないかと考える。
大島訴訟(最高裁判昭和60年3月27日)では、給与所得控除の性格について次の二つの解釈がされる。一つ目に、勤務必要経費の概算控除、二つ目に、他の所得との負担の
調整である。近年の改正は、給与所得控除に課税最低限を操作させるという政策的な役割を強く持たせているのではないかと考えられる。以上の点を踏まえ、本研究では、同判決の示した給与所得控除の位置付けを出発点として、近年の制度改正はどうあるべきであったのかについて検討する。
【分析手法】
まず、二つの実証分析を試みる。第一に給与所得控除が税負担にどのような影響を与えるかについて分析する。このような分析方法によれば橋本(2001)が挙げられる。橋本(2001)によれば税制改正の効果は、控除の変更を前提としたシミュレーションにより税収及び税負担の変化として分析している。本研究において、この手法を参考に給与所得控除の改正が税収に与える影響を分析する。第二に概算的な必要経費としての推計は適切なものかについて分析する。このような分析方法としては、林(2002)が挙げられる。林(2002)は『家計調査年報』のデータを用いて給与を獲得するための概算的な経費について推計している。
【参考文献】
石弘光(1979)『租税政策の効果』東洋経済新報社
井上奈織子(2024)「働き方の多様化に対応する給与所得控除及び特定支出控除制度の検討―テレワーク費用に関する課税上の取扱いに着目して―」 公益財団法人租税資料館『第
33回租税資料館奨励賞受賞論文』
金子宏(2001) 『所得税の理論と課題 第2巻(二訂版)』税務経理協会
金子宏(2021)『租税法』第24版 弘文堂
小林豊(2009)「給与所得控除の理論的根拠についての考察」 『山梨学院法学』第57号
谷川喜美江(2002) 「給与所得控除に関する理論的実証」『千葉商大論叢』第40巻第3号
橋本恭之・鈴木善充(2012)『租税政策論』清文社
林宏昭(2002)『どう臨む、財政危機下の税制改革』清文社
樋口啓子(2006)『所得税制における給与所得控除について』 関西大学大学院修士論文
宮崎裕士(2018)「給与所得控除と基礎的人的控除における改革の現状―最近の税制改正大綱における議論の検討を中心として―」『大阪経大論集』第68巻第6号
【参考資料】
国税庁『国税庁統計年報書』国税庁.
国税庁『税務統計』国税庁.
国税庁『民間給与実態統計調査』国税庁.
国税庁『給与所得者の特定支出控除の実態調査』国税庁.
財務省『税制改正の概要』財務省.
税制調査会(2017)『税制調査会資料:給与所得控除の見直し』内閣府.